「口腔ケアのための洗口液・口湿ゲル」の開発・製品化

日本医科大学武蔵小杉病院 感染制御部の望月医師が中心となって企業との産学連携で開発に取り組んだ、口腔ケアのための洗口液・口湿ゲルが製品化されました。
今回、望月医師に口腔ケアや開発、製品化についてのお話を伺いました。

 

口腔ケアとはどういったものですか?

 口腔ケアは、う歯(虫歯)や口臭、肺炎などの予防を目的として、医療や介護の現場で行われているもので、例えば、歯磨きやうがい、義歯の装着と手入れ、歯ぐきのマッサージなどがあります。
特に、自力で呼吸や痰(たん)を出すことが難しく、人工呼吸器を装着されている患者さんは、気管にチューブが入れられているため、医療スタッフが適切な口腔ケアをしないと、口腔内の細菌などが唾液や胃液と一緒に気管に入り、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になってしまう確率が高くなります。一旦、誤嚥性肺炎を発症すると、その後の治療が難しくなります。
 口腔ケアによる肺炎の予防効果については、研究により実証もされています。

 

  口腔ケア群(184人) 対象群(182人)
発熱発症率(%) 14.7 29.7
肺炎発生率(%) 11.4 18.7
肺炎死亡率(%) 7.6 16.5

※ 要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究:

米山武義、吉田光由他日歯医学会誌:20,58-68,2001

 

これまでどんな口腔ケアが行われていたのですか?

 市販のうがい薬による口腔内の洗浄、ブラッシングによる口腔ケアを行っていましたが、市販のうがい薬では、殺菌作用が強すぎるため、口の中の環境を維持するのに必要な菌(常在菌)まで死んでしまうという問題がありました。また、粘膜に対する刺激も強いため、粘膜が荒れてしまい、口の中が乾燥してしまうという問題もありました。

洗口液・口湿ゲルとはどんなものですか?

 洗口液とは、口の中に含ませて少しの間クチュクチュすることで口の中を洗浄する液体です。
また、口湿ゲルは口の中が乾燥するのを防ぐための保湿成分を含んだゼリーのようなものです。これは、口の中に塗って使うものです。言わば、お化粧の際の保湿液と同じようなものです。

どのようにして開発されたのでしょうか?

洗口液と口湿ゲルの開発は、ユースキン製薬株式会社(川崎市)と一緒に進めました。もともとは、川崎市の主催する「かわさきライフサイエンスネットワーク事業」の一環として開催された「川崎市-日本医科大学連携ライフサイエンスマッチング」(2007年10月23日)で開発を提案したのがきっかけです。このマッチングにユースキン製薬株式会社の担当者の方が参加をしており、声をかけていただいたことから、共同開発を開始しました。

今回の洗口液・口湿ゲルの特徴はなんでしょうか?

 口腔内の粘膜を刺激せず、保湿効果、抗菌力があることが大きな特徴です。抗菌成分として、お茶に含まれていることで知られているカテキンのなかでも生理活性の高いエピガロカテキンガレートを高濃度に配合しています。カテキンを使った試験では、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌、アシネトバクターといった病原菌への抗菌性があることが明らかとなり、また、インフルエンザウイルスを抑制することも分かりました。

 

※ 左から、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、緑膿菌、アシネトバクターに対する

  抗菌試験の結果を示しています。

※ 試験機関:財団法人 北里環境科学センター(北生発22_0307号.23_0315号.22_0462号.

  23_0142号)

製品化するにあたってどういった点に配慮しましたか?

 抗菌・保湿効果をもたせることはもちろんですが、そのほかに、実際に医療現場で使う場合に衛生的で保管場所に困らないよう、使いきりタイプにしてもらいました。また、口腔ケアを担当する看護師の意見も取り入れながら、持ちやすく、作業がしやすい容器にするよう要望しました。今回の製品にはこうした医療現場の要望を反映させてもらえたと思っています。

 

  

 

今後どのような研究を進めていきますか?

 抗菌性については既に立証していますので、開発した洗口液や洗口ゲルによって、口腔内の保湿効果がどれくらい保たれているのかといった臨床データを積み上げていきたいと考えています。

(望月医師 ユースキン製薬 野渡社長)